陶氏診療院

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医学の根底にあるテーマは哲学である
——生命観が医療の方向を決める——

医学とは、本来「生命とは何か」という問いから始まる学問である。

この問いに対する“答えの形”が、そのまま医学の姿勢・診断の視点・治療の方法を決めていく。つまり、医学の根底には必ず哲学がある。

西洋医学は、身体を「構造と機能」で捉え、病を「部分の異常」として分析する。

これは西洋哲学の中心である存在論(Ontology)と還元主義の延長線にある。

臓器・細胞・分子へと細かく分け、ミクロを追究することで真理に近づくという世界観である。

一方、中国医学は、身体を「気の流れ」「陰陽の均衡」「自然との調和」という関係性の哲学で捉える。

これは東洋哲学の気一元論、調和の思想、天人合一という生命観を土台にしている。

ミクロに分解するのではなく、「全体の流れ」「バランス」「変化の方向性」を読み取る学問である。

どちらも、ただの技術ではない。その背後には、世界の見方=哲学がある。

● 哲学が違えば、医学の答えも違う

「病は細胞の異常」と見るか

「病は気の偏り」と見るか

「症状を消すべきもの」と考えるか

「症状は身体からのメッセージ」と考えるか

「数値を正常にすれば治る」と信じるか

「生命力の回復こそ治癒」と捉えるか

これらはすべて医学上の技術論ではなく、哲学の違いから生じる結論である。

● 哲学なくして、医学は方向を失う

現代医療は、検査データ・ガイドライン・プロトコルを重視しすぎたため、「人を診る医学」より「数値を診る医学」に傾きやすい。

しかし、患者は数値ではなく“生命”である。生命には、個性・歴史・気の動き・環境との関係があり、それらは哲学なしには理解できない。

西洋医学の強みは「分析」。
中国医学の強みは「統合」。
この二つを架け橋するものが哲学である。

● 哲学の復権こそ、未来の医療

治療から予防へ。
未病から健康へ。
数値から生命へ。

医療の進むべき方向を決めるのは、技術ではなく哲学である。
2025-11-18