陶氏診療院

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国際量子科学技術年から考える ― 量子と中医学、札幌の冬に学ぶ調和
いまからおよそ100年前、物理学者たちが築いた「量子力学」は、人類の自然観を大きく変えました。目に見えないミクロの世界に潜む法則を明らかにし、現代科学の根幹となっています。

2025年は、量子力学誕生から1世紀を記念する「国際量子科学技術年」とされ、量子の世界に改めて注目が集まりました。

量子力学の象徴的な現象の一つに「量子もつれ」があります。離れた粒子が一体のように影響し合うこの現象を、かつてアルベルト・アインシュタインは「不気味な遠隔作用」と呼びましたが、その実験的検証の功績により2022年のノーベル物理学賞が授与されました。この“見えないつながり”を思うとき、私は中医学が語る「天地人は一体である」という考えを自然と思い出します。

札幌の冬を生きていると、自然との対話の大切さを日々実感します。吹雪の日には無理に抗わず、雪のリズムに合わせて行動を調整する。厳しい寒さの中では、身体を温め、食を整え、静かに内側の力を養う。

冬は、外の活動が抑えられる一方で、内にエネルギーを蓄える季節です。これは中医学でいう「陰が盛んになり、陽を蔵する」時期にあたります。自然に逆らわず調和して生きることが、最も賢明な養生となります。

量子が粒子と波の両面を持つように、生命もまた固定されたものではなく、常に揺らぎながら存在しています。中医学では、この揺らぎを「陰陽の動き」として捉え、「気」が全身を巡ることで調和が保たれると考えます。

臨床の現場で感じるのは、病気とは突然現れるものではなく、気の流れの滞りや陰陽の偏りが積み重なった結果として姿を現すということです。札幌の冬でも、寒さに備えず無理を重ねれば体調を崩しますが、自然のリズムに寄り添えば、むしろ心身は深く整っていきます。

西洋医学は、吹雪の中で道を切り開く除雪車のように、急性の問題を力強く解決します。一方で中医学は、季節を読み、生活を整え、雪が静かに大地を潤すように、身体の内側から回復力を育てていきます。両者は対立ではなく、互いに補い合う存在です。

量子の世界が教えてくれるのは、「見えない働きこそ本質である」という視点です。そして札幌の冬が教えてくれるのは、「自然と調和することこそが強さである」という知恵です。

健康とは、病気がないことではなく、気が巡り、陰陽が和し、自然と響き合っている状態です。雪の静けさの中で呼吸を整え、自分の内側に耳を澄ますと、身体が本来持つリズムが感じられるでしょう。

量子を学ぶことは、自然の深い秩序を学ぶことでもあります。そして中医学を実践することは、その秩序とともに生きることです。

札幌の長い冬の中で、自然と対話しながら、内なる調和を育てていきましょう。そこにこそ、真の健康への道があると私は感じています。
2026-02-17