陶氏診療院

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腸内細菌に関する新たな知見
第29回統合医療学会学術大会に参加し、多くの最新情報を得ました。昭和医科大学臨床腫瘍学部門の吉村清先生による「腸内細菌を通じて考えたがん免疫療法の未来」と題した講演では、従来の常識を覆すような内容もありましたが、同時に新たな希望も感じられ、人体の生命の神秘を改めて実感しました。

例えば、米国テキサス州で行われた研究によると、悪性黒色腫に対する免疫チェックポイント阻害剤(西洋式の免疫療法)の治療において、ビフィズス菌の調整剤(プロバイオティクス等)が治療効果を妨げる可能性が示されました。一方、植物繊維を多く摂取し、調整剤を摂らないグループの治療成績が最も良好であったとのことです。また、同じ欧州内でも、オランダとイギリスで行われた研究では、腸内細菌の役割に差があることが事後研究で明らかになりました。こうしたことから、昭和医科大学の研究によれば、日本の患者はがん免疫活性に関して、他国と比べてユニークかつ有利な特性を持つ可能性があり、免疫関連有害事象(irAE)を起こしやすい可能性も示唆されています。今後はAIを活用し、腸内細菌叢を解析しながら、西洋医学的免疫療法の成績向上を図る可能性が見えてきました。

腸内細菌の多面的な役割に関する研究が進むにつれ、免疫療法への影響や地域差が明らかになり、治療効果を高める手段として、「便微生物移植(FMT)」や経口摂取可能な「便」由来サプリメントの開発といった発想も生まれています。

腸内細菌叢に最も影響を与える要素は加齢です。運動や筋力を維持することが、腸内細菌叢を良好に保つ最も効果的な方法であることも分かってきました。
2025-12-20